【短】雨音に耳をすまして


「会話してない方を覚えてるなんてね。美音は本当に不思議な子」



 確かに、普通なら話した方が印象に残るはず。


 それなのに忘れてしまったのは、よほどあのCDが欲しかったからかもしれない。
 CDしか印象に残らないなんて、とことん人に興味がないんだな。


 一人、過去の自分を分析する。



「でもさ」

「なに?」

「やっぱり美音が気になる」

「え?」

「そうやって素っ気ない態度を取るし。かと思ったらいきなり傷ついて泣きそうになる」



 他人に勝手に分析されると恥ずかしくなる。
 あたしは熱が顔に集中するのを感じていた。



「あまり興味を示さない美音が、唯一興味あるもの」

「……音楽」

「そう。オレ、マジで音楽に嫉妬してたんだからな」

「……ふうん」

< 24 / 34 >

この作品をシェア

pagetop