【短】雨音に耳をすまして
「会話してない方を覚えてるなんてね。美音は本当に不思議な子」
確かに、普通なら話した方が印象に残るはず。
それなのに忘れてしまったのは、よほどあのCDが欲しかったからかもしれない。
CDしか印象に残らないなんて、とことん人に興味がないんだな。
一人、過去の自分を分析する。
「でもさ」
「なに?」
「やっぱり美音が気になる」
「え?」
「そうやって素っ気ない態度を取るし。かと思ったらいきなり傷ついて泣きそうになる」
他人に勝手に分析されると恥ずかしくなる。
あたしは熱が顔に集中するのを感じていた。
「あまり興味を示さない美音が、唯一興味あるもの」
「……音楽」
「そう。オレ、マジで音楽に嫉妬してたんだからな」
「……ふうん」