【短】雨音に耳をすまして
そんなあたしの態度が、理久を苦しめているらしく、彼は頭を抱えた。
「あなただって音楽辞めて、テニスなんかしてる。人って変わるのね」
「変わってない。テニスだって音楽だ」
「テニスが音楽?」
意味がわからず、彼に解答を求める。
そんなあたしが可笑しかったみたいで、軽く笑ってから答えてくれた。
「テニスってさ、プレーヤーそれぞれが音を持ってるんだ」
「音?」
「リズムってやつさ。こいつを崩されたら負ける」
「へえ」
「相手にオレの音楽を聴かせてやるんだ。だから、音楽が嫌いになったわけじゃない。オレは外にある音を求めるようになっただけ」