【短】雨音に耳をすまして
外のものに夢中になることがなかったあたしには、理久の思っている世界がよくわからない。
「恋してる時ってさ、世界の音が変わるんだよ」
「そう……なんだ」
憂鬱な雨の音もまるでコロコロと鈴を鳴らすかのように美しく、傘をさせばトントンと木琴を奏でるようにさえ感じる。
理久はそう力説して、恋はいいものだと教えてくれる。
「だから、わかんない?」
「なにが?」
理久は質問を返すあたしに、ため息をついた。
でも、次の瞬間には真面目な顔をする。
いきなりあたしの肩に手を置いて、じっと見つめてくる。