【短】雨音に耳をすまして
「あの……あたし……」
「わかってるよ。美音の興味は音楽だけだって」
あたしは頷いた。
すごくぎこちなくて、頷いたのか、首を横に振ったのか自分でもよく分からない。
すると彼は肩から手を離して、にっこり笑う。
「ごめんな。いきなり」
「そんな……っ。あたし、こそ」
「でも、本当のことだから。嘘じゃない」
嘘ではないとわかっている。
ヘラヘラと笑うことのある理久だけれど、目は真剣そのもので魅了されてしまう。
日に焼けた肌の向こうで赤くなる頬が、彼の一途さを証明している。
こんなあたしを好きだと言う人がいた。
それだけで、あたしは幸せになれた気持ち。