【短】雨音に耳をすまして
あたしの音
―*―
いつもだったら無視していた。
いつもだったら、すぐにCD探しに夢中になっていた。
でも気がつけば、何かに背中を押されるように駆け出して彼の手を引っ張っていた。
そんな行動にびっくりしたのは、もちろん理久だけじゃない。
あたしも驚いて、恥ずかしくなって、すぐに手を引っ込めた。
「え、えっと……」
「美音? 雨に濡れるよ」
「告白されたからとかじゃないから。ただ……」
あたしは一度、深呼吸する。
初めて、心を動かされた。初めて……。
「また会いたい」
「え?」
「あなたの好きな音楽、知りたい」