【短】雨音に耳をすまして
思い出の音
―*―
実は彼と会うのは初めてじゃない。
ただ、こんな風に話してくれたのは初めてだし、あたし自身、こうやって文句を言うつもりはなかった。
去年の夏。あたしは高校二年生で、彼は今日みたいなポロシャツ姿だったのを覚えてる。
学校帰りで、やっぱり今日と同じ五時過ぎ。
あたしはいつものようにCDショップに入り浸っていた。
エアコンの効いた店内で涼みついでに、最近の流行り曲を聴きまくる。いつもと同じ。
そろそろ帰ろうかと店の外を見た瞬間の落胆。
いつの間にか降り始めていた雨。店の外が見えないほど強く激しい雨に、長居したことを後悔した。