【短】雨音に耳をすまして


 確か、その日は学校で馬鹿にされて怒ったんだ。



『美音、CD買ってるの?』

『スマホあるんだし、そこに入れちゃえばよくない?』



 CDを買っていることを話せば、そんな友達の心無い言葉。今、思い出しても腹が立つ。


 あたしは単純に仲間が欲しかった。


 一つの音楽に夢中になり、CDが擦り切れそうなほどに何度も聴く。
 そういう自分の好みを持った、心から音と詩を楽しむ仲間が。


 それをきっと彼に求めていたんだ。


 勝手な想像。だけど、こんな店に来る彼のことを知りたいと思った。


 でも、あたしは素直じゃないから。



 ――――またいつか、会えたら……。



 そんなことを思いながら、土砂降りの中を走り出したっけ。

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