東の空の金星
その7。意地を張っているのは誰ですか?
1月中旬。

マスターが開店準備をしながら、

「先輩この間のお見合いすっぽかして、シマちゃんと遊びに行ったんだって?
あいかわらず、しょうがない人だねえ。
でも、春になったら温泉に行こうって先輩に誘われて、
遥香も『行く』って即答だったな。
乳母みたいなシマちゃんと先輩がいれば俺たちのんびりできそうだしねえ。」

と言われてしまう。

みんなと一緒に温泉は嬉しいけど、
お見合いをすっぽかすのはよろしくない。


「あー、えーと、お見合いってどうなったのかな?」

と聞いてみる。

その件については最近棚上げだったんだけど…


もう、考えないといけないんだろうな。

最近大和さんと私は近すぎる。っていうのはわかっているのだ。



「マスター、最近大和さんにお見合いの話は出ていないんですか?」

「やー、こないだのすっぽかしはダメでしょう。
先輩は知らなかったって事になってたんだろうけど、
院長夫人にとってはドタキャンで平謝りだったんじゃない。
しばらくなさそうだよね。
でも、いいんじゃない?先輩は再婚する気はまるでないみたいだし」

「で、でも、会ってみたら良い人かもしれないじゃないですか?
結婚しなくっても、パートナーはいてもいいと思うし…」と私が言うと、

「シマちゃんは先輩に恋人がいた方が良いって思ってるの?」

「…桜子さんとの思い出だけじゃ、寂しいかな。
最近オートバイには乗るようになってるんだと思うけど、
仕事ばかりじゃ…」

「僕は最近シマちゃんと仲良しだなって思ってるけど…」

「年の離れた兄妹か、年の近い親子って感じですよね。」と少し笑うと、

「…そう?先輩、シマちゃんの話をするとき、楽しそうだよ。…」

と言ってマスターはにこにこ笑った。



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