東の空の金星
私はふと、思いついて、

「三島先生。あの病院の前のマンションに住んでるの?」

「そうだよ。遊びに来る?古くて狭いけど。」

「じゃあ、なんで住んでるの?」

「あの病院は麻酔医が少ない。
痛みを抑えてあげるのがあそこでの僕の仕事だから、
必要な時呼んで欲しいって思ってるんだよ。
2年間って決まってたし。
で、僕は真面目だから、近くに住んでる。」と機嫌の悪い顔を見せる。

「カッコイイ。好きじゃないけど。」と私が笑うと、

「好きじゃないは余計でしょ。」

「行ってみようかな。」

「え?!」と三島先生が大声を出す。

「嘘だろ。」とマスターも声を出した。

おお、と常連さんがざわつく。

みんな聞き耳を立ててるね。



まあ、いいか。

「絶対襲わないと誓える?」

「誓う!」

「シマちゃん、やめときな。」とマスター。

「週末のお昼。に行ってもいい?
お昼を作って持っていったら、一緒に食べる?」

「一緒に食べる!」

「俺も一緒に行こうか?」とマスターが私に聞く。

「大丈夫ですよ。先生の両手を縛ってから部屋に入りますから。」と私が笑うと、

「冗談に聞こえないのが怖え。」

と三島先生はニコニコした。


「…今更、始まるの?」とマスターが呟いた。



…違うけど。と心のなかで言っておいた。
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