東の空の金星
「ここで襲わない?」とドアの前で聞くと、

「この間、シマちゃんと約束してる。」

と眉間にシワを寄せ、ドアを大きく開けて、どうぞ。と私を部屋に入れた。


1DKの角部屋。

ダイニングキッチンは6畳。
横にそのまま作り付けのクローゼットが付いたフローリングの6畳の部屋につなっがている。
バストイレは別。少し古いけれど、明るい部屋だ。

大きな窓は江ノ島側を向いているけど、見えるのは古い住宅街。

角部屋なので6畳のサイドにも窓があって、少しだけ海が見える。

「狭いけど、1人で暮らすのには十分だよ。
…藤原さんの家を出るの?」と察しのいい三島先生が私の顔を覗く。

「…そろそろ、一緒にいるのは限界かなって思って…。」と私が笑うと、

「賢明かな。あの人、女心とかわからないでしょう?」

「優しいの。…家族みたいに…。」と私が顔をしかめると、

「その点については、僕は感謝しないといけないな。
シマちゃんはちっとも優しくないし…。
きっと、僕は東京に異動になったら忘れられるよ。」と私の顔を見た。

「私のことは早く忘れてください。幸せになってね。」と言うと、

そっと私の頬に触れ、

「藤原さんと一緒にいるのが辛いなら…
僕とセックスフレンドになってみる?」と真面目な顔をするので、

「もう、ならなくていいでしょ。
私は藤原さんからやっと離れる決心が付きそうだし、先生も異動になる…
藤原さんに会っていなかったら、
三島先生と軽いノリで寝ていたかもしれないな。
先生、顔がいいし、気も合うし、…結構好みだった。」と真面目な顔で答えた。

「うん。ここにくる前のシマちゃんに会いたかったな。
…ご飯にしようか。」

と三島先生はダイニングテーブルの上にトートバッグを乗せて

ニッコリと王子の笑顔を見せた。
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