東の空の金星
ふたりで向かい合って食事をする。

きっと、これで最後。

三島先生は美味しそうにおにぎりを食べ、

「頑張り過ぎていないいつものご飯って感じが嬉しい。」と笑いながら食事をする。

「まあ、通常運転です。」と言うと、

「ちょっとはドキドキしてほしかったなあ。」とお茶を飲んだ。


玄関で靴を履きながら、

「…えーと、先生の引っ越しが決まったら、この部屋の不動産屋さん紹介してください。」

「了解です。引っ越しの日。見送ってくれる?」

「良いですよ。仕事の日じゃなかったら…」と言うと、

「ちょっと待ってて。
ここって人気だから、不動産屋に先に電話しておく。」

と先生はトートバッグをを持ったまま、部屋に戻っていく。

帰れないじゃないか。

下まで、送りたいのかしら。と玄関の外で待つと、


「オーケー。」と玄関を出て来るので、

「ひとりで帰れますよ。」と顔をしかめても、

「下まで送るよ。」と私の手を握って歩き出す。

まあ、いいか。最後だし…

と一緒にエレベーターに乗りこんだ。
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