東の空の金星
ああ、やっちゃったな。

2度と戻れなくなったんじゃないかな?

どっか泊まるところを探さなきゃ…。

と思いながら店の前の住宅街の坂道をどんどん歩く。

ご近所仕様のコートのポケットを覗くと、スマホと小銭入れしか入っていない。

せめて、クレジットカードくらいは持っていたかったとため息が出た。

やっぱり、遥香さんにはいえないなあ。
桜子さんの親友だったし…


仕方ない。



夕方になったら、三島先生に電話して、お金を借りよう。

今はちょっとショックが大きいだろうし、

お別れのキスの途中で相手がいなくなるってどうなんだろう?




寒さが身にしみる。

手袋とかマフラーとかして出てくるんだった。

とポケットに手を入れて歩き続けた。

< 111 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop