東の空の金星
芳江さんが2階にあがったタイミングで、

「シマ、ちょっとここに座れ。」

と急に不機嫌な顔になった大和さんに
私は窓際の席に座らされる。

なに?芳江さんへの報告は滞りなく済んだと思ったけど…


「シマ、さっき『結婚するかわからない』と言ったか?」

「え?だってそうでしょ。」

「おまえは昨日、ずっとそばにいると俺に言ったんじゃなかったか?」

「言ったけど…」

「42歳の男と付き合うのにおまえは結婚を考えてもいないのか?
俺はてっきり結婚するものだと思っていたぞ。」

「か、考えていない訳では…」と赤くなって言うと、

「困った奴だな。
俺はシマの実家にいつ挨拶に行こうかと思っていたのに…」

「ほ、本当に私と結婚するつもりなんですか?」

「俺は軽い気持ちでシマを抱いた訳じゃない。
シマはどんなつもりなんだ!?」と声が大きくなっていくので、

「わ、私だって軽い気持ちで抱かれた訳ではありません!」と強い口調で言って、大和さんと睨み合う。


「はいはーい。つまらない喧嘩はやめてくださーい。」

とマスターの声がして
美羽ちゃんを抱っこした遥香さんも一緒に顔を出した。


「なあんだ。週末に三島先生の家に行くって聞いたから、
ふたりがどうなってるのかと思って心配して来たのに…」

と遥香さんがクスクス笑い、マスターと顔を見合わせる。

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