東の空の金星
シマが俺の家に住み込みをするようになってから
俺が毎朝早く目が覚めていて、
(昔、桜子の痛み止めが切れてくるのは朝方で、
時折苦しそうにしていたので、俺は薬を飲ませたり、身体をさすったりするのに必ず起きていた。)
シマがパンを作る所を目にするようになると
シマはかなり集中していて、
俺が見ていることは、ほとんど気にならない様子だったから、よく観察できた。
パン生地を専用の道具でカットするときも、
パンを両手それぞれ使って器用に丸め、
それぞれの形に作っていく時も、
ちっとも迷いのない手つきで、
手際よく作業をすすめ、
ただの白い塊だったものが、
次々と新しいものに生まれ変わる瞬間を見ている気分になった。
魔法の手。
本当にそうおもった。
遥香ちゃんに言うと、
「気になるんだ。」とくすんと笑われ、
「普通、気になるだろ。パン職人に会うのは、初めてだし。」
「へええ。」と意味ありげに見つめられたのを思い出す。
俺は自分で気付いてなかったけど、
きっとその頃から、俺はシマに釘付けだったのかもしれない。
俺が毎朝早く目が覚めていて、
(昔、桜子の痛み止めが切れてくるのは朝方で、
時折苦しそうにしていたので、俺は薬を飲ませたり、身体をさすったりするのに必ず起きていた。)
シマがパンを作る所を目にするようになると
シマはかなり集中していて、
俺が見ていることは、ほとんど気にならない様子だったから、よく観察できた。
パン生地を専用の道具でカットするときも、
パンを両手それぞれ使って器用に丸め、
それぞれの形に作っていく時も、
ちっとも迷いのない手つきで、
手際よく作業をすすめ、
ただの白い塊だったものが、
次々と新しいものに生まれ変わる瞬間を見ている気分になった。
魔法の手。
本当にそうおもった。
遥香ちゃんに言うと、
「気になるんだ。」とくすんと笑われ、
「普通、気になるだろ。パン職人に会うのは、初めてだし。」
「へええ。」と意味ありげに見つめられたのを思い出す。
俺は自分で気付いてなかったけど、
きっとその頃から、俺はシマに釘付けだったのかもしれない。