東の空の金星
7月。

芳江さんに家を追い出されて、水族館に行った。

このあいだ江ノ島にも行ったけど、
休日に仕事じゃない外出をするのは、
やっぱり久しぶりだ。

シマも休日はゴロゴロしているのが普通らしく、
いつも店の窓から見える海を頬杖をついて眺めていたりしている様子だけど…。



一緒に追い出されたシマは隣でポカンと口を開けたまま、魚の群れを飽きずに眺めている。

パンを作る以外の時は、ちっともしっかりしているようにはみえないな。

と横顔を見下ろす。

俺を見上げる瞳は楽しそうだ。

ずいぶんと年上の俺といても、特に嫌がる様子も、気を使う様子もないから、
俺もリラックスできているかな?

シマのそばにいる俺はのんびりと暖かい気持ちになる。

シマは素直で、健やかだ。
まあ、時々生意気だけど、
自分の意思がはっきりしているので
オンナノコだけど、わかりやすいかな。

俺はオンナノコの気持ちがわからない奴だと
よく、桜子に怒られていたけど、
オンナノコの方もわかりやすく気持ちをだしてくれるといいのに。
と常々思っているから、

感情表現が豊かなシマは楽ちんだ。
機嫌が悪くなるとすぐわかる。
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