東の空の金星
やっと電話に出たシマは由比ヶ浜ににいると言った。

急いで迎えに行ったけれど、約束したコンビニにはシマはいない。

あのリス。どこにいる。

海沿いを走ると、まだ浜にいてぼんやり海を見ている。

…そんな事だと思った。

あのリスは海を眺めるのが好きだ。

海を眺めていてうちの店を見つけ、

海が見える店を気に入って仕事をする事にしたらしい。



やれやれ。

不機嫌な顔で近づくと、小さな声で言い訳をする。


本気で怒っているわけじゃない。

見つけてホッとして文句を言っただけだ。



バイクで迎えに来た事が分かるとパアッと表情が明るくなる。

そんなに嬉しいのか?

俺がバイクに乗ったのが

変なヤツ…。



後ろに乗って、そんなに無邪気に抱きしめないでほしい。

心臓がバクバクいっている。


振り向くと笑顔のシマがいる。

桜子とは全く違う。

当たり前だけど…。

でも、好きになった。


俺はどこまでも走っていける気がした。
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