東の空の金星
12月。

シマが一緒に出かけたいと言う。

でも、明日は先約がある。

残念だ。

シマはどうしたんだろう?


俺の見合いを気にしたりして…。

ヤキモチ…?まさか…そうじゃないな。


働き先を無くしたくないのか?

今日のシマの態度は腑に落ちないが…。



俺は見合いはしないし、店をなくすつもりもない。

シマの居場所は俺のそばに広く取っておくけれど…


歳も16も離れているし、

俺はきっと桜子を忘れられないだろう。

シマは俺と一緒にいても、物足りなさを感じるだけだ。

そう思っても、強く惹かれて行くのがわかる。




諦めなければならないという理性と
いつまでも一緒にいたいと願う思い。

ふたつの気持ちのあいだで俺は身動きがとれなくなっている。



もう少しだけ俺に猶予を与えて欲しい。

いつか他の男のものになるとしても。

もう少しだけ少し俺のそばにいて欲しい。

手を離す勇気が持てるようになるまで。

やっと、俺は未来の夢を見るようになったばかりだから


もう少しだけ…。



シマと並んで夜明けの空をみあげるとき、

最近の俺は東の空の金星にそんな事ばかりを願っているようだ。
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