東の空の金星
その2。未知との遭遇。
『凪』での仕事を始めて、数日経った。

カフェの仕事はそう難しく無くて、

ここの仕事の仕方を覚えれば、大丈夫そうだ。

実家のパン屋も、
パンをそこで食べるための小さなカウンターテーブルが付いていた店だったから、
コーヒーや紅茶を淹れたりして、
販売も、接客も経験があったし、
そう戸惑う事なくやっていけそうだ。

私のお城になった、使われていなかったキッチンは、
週末に点検と清掃を済ませ、

ピカピカと輝いて私を待っているようだ。


「遥香さん、産休に入っても、2階にいるなら、また会えますよね。」と私がいうと、

「ああ、言ってなかったかしら、私達はここに住んでるわけじゃないの。
オーナーが2階に住んでるのよ。
まあ、私は暇になるから、たくさん様子をみにくるわ。」
と笑う、

「そうなんですか?」

と、驚いた私は慌てて
洗っていたスプーンをカチャンとシンクに落としてしまう。


遥香さんは笑いながら

「その、驚いた時の目を見開いた感じが小動物っぽくって可愛いね。背も小さいし。」と言う。

遥香さんは背がきっと165センチ以上あるよね。
スタイルもいいし。
…152センチで細い私は並ぶと子どもに見えるよね。
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