東の空の金星
夕方、軽井沢に着くと

シマのお母さんと、兄2人の家族、8人が
雰囲気のある木造平屋建ての店の後ろの実家に勢揃いしていて
俺はものすごく大人数に驚いたけど、
これがいつもの日常だと聞いて

シマの思っている家族っていうものが少しわかった気がした。

シマの家族から矢継ぎ早にされる質問は
どれも、俺と、シマの関係を咎めるつもりはないようで、
俺がきちんとシマを愛していて、安定した収入がある。という事がわかると、
興味深々でそのスーツはどこのブランドだ。とか
シマに贈った指輪はいくらしたのかとか
江ノ島は夏になると、水着の女の子がたくさん道を歩いているのかとか、
流行りのパンケーキの店は本当に美味いのかとか
まるで関係ない事まで質問が延々と続いた。

食事とコーヒーのお代わり2杯まで終わると、お義母さんは

「いずみは言い出したら聞かないからねえ。」

と俺にニッコリ笑いかけ、結婚を許してもらった形になった。


そして

帰りがけにやっと仏壇に案内され、亡くなったお義父さんに挨拶をしてから、
シマに実家を後にした。

「今度は泊まって、焼きたてのパンを食べていって。」

とお義母さんに言われて、大きくうなずき、

「これからもよろしくお願いします。」

と深く頭を下げてから、車に乗り込む。

勢いで挨拶に来たけれど、
飾らない人達の間で無邪気にのびのび育ったシマを思って
温かい気持ちでいっぱいになった。


帰り道、FMから流れる懐かしい歌を口ずさむと、
シマも一緒に口ずさむ。

これからたくさん一緒に歌える歌が増えると、シマは笑う。

俺はとても幸福な気持ちになって

「楽しみにしよう。」


とシマに笑いかけた。
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