東の空の金星
翌朝、シマを起こして、夜が明けていくのを一緒に眺め、

桜を見に行こうとシマを誘う。

桜子の遺骨は桜子の希望で実家に引き取られ、
俺は墓参りをしないよう、桜子に約束させられていたから、
シマと新しい生活を始めるにあたり
自分の決心を報告するのは
桜が咲いたときに昔よく行った場所にしようと決めていた。


本当はシマとのことを桜子に報告するのは
来年になるかと思っていたので、
なんと言おうかとちっとも考えていなかったけど、

急にシマの決心がついたようなので、
ちょうどいいから報告を済ませたい。と思いたったのだ。


桜のトンネルの前でオートバイを止める。
月並みだけど、
桜子に今までありがとう。と別れを告げる事ができた。


桜子、本当に愛してた。

と涙が頬をつたう。


朝の光の中、海岸沿いをオートバイで走る。

後から俺の体にギュッと手を回すシマの体の温かさを感じながら

俺は新しい始まりを感じていた。



「来年も一緒に桜のトンネルを通りたいです。」と言うシマの声が聞こえる。

俺は泣いているのを悟られないように

「おう。」と短く返事をした。
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