東の空の金星
桜の花を長い間見上げて、
ふと気づくと、
坂の上から、同じように桜を見ている男のひとがいる。

いつからいたんだろう。

バイクに乗って来たのだろうか。
黒のデニムに紺と黒のジャンパーはオートバイ仕様かな。
ヘルメットを持って、桜の木を見上げている。
遠目から見ても、がっしりした身体つきなのが分かる。

いつまでも、桜を見上げていた私は
オカシナオンナに見えただろうと、
少し、気になる。

とりあえず、この場を離れようと、来た道をまた、足早に戻る事にした。

やれやれ。

何をしているんだろう。

のんびり海を見に来たはずだったのに
急ぎ足で鎌倉の町を歩き回っている自分に呆れる。
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