東の空の金星
私が顔を強張らせたところに、

バサバサっと大きな音がして、
膝に置いたサンドイッチが無くなっていた。

なに!?

「あーあ。君はこの辺の人じゃないね。
この辺はトンビが観光客の広げる弁当を狙ってるんだよ。」

とくすんと笑った瞳と目が合う。

整った顔立ち。
印象的な力のある瞳。
目尻のシワは30台半ばかな。
やっぱり身体が大きい人だったな。
と呑気に見てしまったけど…

「…サンドイッチ」

と空を見上げると悠々と頭の上を舞う、トンビの姿があった。

「サンドイッチは諦めた方が良いね。
…俺はこれから、好きな蕎麦屋に行くけど、
君も行く?」

とチョット微笑む笑顔に
胸がトクンと鳴る。
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