東の空の金星
運ばれて来たお蕎麦は
キュッと締まっていて、舌触りがザラッとした香りの良いお蕎麦だった。
鴨肉も柔らかく上品な鰹だしの美味しい汁だ。

「すごく美味しい!」とおもわず、声が出た。

「でしょう。ここで毎日、蕎麦を打っているんだよ。」

と向かい合った席で嬉しそうに微笑む瞳にドキンとして、

チョット目をそらす。

頬が赤くなったのはバレただろうか?


「さっき長い間桜を見上げてたね。
桜が好きなら、この後、桜のトンネルにバイクで案内しようか?」

「バイク…乗った事はないけど…」

「ここでヘルメットを借りればいいし、
別に後ろに乗るなら難しくないよ。自転車のうしろの立ち乗りと一緒。」

「自転車のふたり乗りは禁止です。」

「自転車の後ろって乗った事ないの?」

…いや、高校生の時ふざけてチョットはあるけれど…

私が黙ると、

「ショウタ、メット貸して。直ぐ返すから。」と男は奥にいた店員に声をかけた。

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