東の空の金星
男は夜遅くまで、何度も私を求め、

激しく繋がり合い、

そのままシャワーも浴びずに、私はぐっすり眠ってしまった。



そっとドアの閉じる気配を感じて、

朝方目を覚ますと、私はベッドの上にひとりだった。


好きになっちゃったのに…


まあ、そんなものだ。

私は身支度を整え、ホテルの部屋を出た。

フロントに寄ると、清算はキチンとされていたし、

そう、悪い日じゃなかった。

体の相性は良かったと思う。

イケメンだったし…



初めて乗ったバイクの後ろは気持ちがよかったし、

桜の花のトンネルも綺麗だった。

会ったばかりのヤマトを

好きだって思ったのは計算外だったけど、

まあ、いいや。

失恋には慣れている…。



私は空を見上げ、少し涙を流してから、

4両編成の始発の電車に乗ってガタゴト揺られ、

日常に戻る事にした。


それが、1年前の桜の咲く頃の思い出だ。
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