東の空の金星

ハルノキツネ。

その後の季節にはここに来れなかった。

どうしても…

突然始まった恋が終わっているのをみたくなかったからだ。

いや、相手の男「ヤマト」にとっては

ただの通りすがりだっていうことがわかることを

あの朝彼はベッドにいなかったのに…

それが答えだとわかっていても、

私の心は拒否していた。



ヤマトはどんな仕事をしていて、どこに住んでいるんだろうか?

出会った時に恋人はいたんだろうか?

もしかしたら、妻も子どももいたのかもしれない。

何も知らないのに

事ある毎に思い出してしまうなんて、

あの笑顔をまだ好きだなんて、

数日後には30歳になるというのに、

何をしているんだろうと思う。


もう、忘れなければ…

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