東の空の金星
ガタゴト揺れる電車に乗りながら、

あの日と同じ4月の最初の土曜日に

同じコースを辿って、おしまいにしよう。

そう、心に決めてここにやって来たのだ。



小町通りを抜け、記憶を辿って、住宅街の坂道の上の桜を見つける。

「あった。」

今年も綺麗だ。大きな桜。

私は祈るように桜を見上げ続けた。


まあ、でも何にも起こりはしない。

桜はただ、美しく咲き誇っているだけだ。



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