東の空の金星
1年前と同じように古い店の外に美味しそうな出汁の香りがする。

私は思い切ってガラガラと引き戸を開けた。

「いらっしゃい。…春のキツネだ。先輩!」

と1年前と同じ店員の驚く声に

「…わかってる。」

と前にふたりで座った奥の席から

ゆっくり立ち上がったヤマト。


私は驚いて立ちすくむ。

「サクラコ。…会いたかった。」

とあいかわらず、大きなヤマト。

いつの間にか彼の腕の中にスッポリと包まれている。


「どうしてここに?…」と私の頬を涙が滑り落ちる。


「サクラコを待ってたに決まってるだろ…」


とヤマトは驚く私の体を固く抱きしめた。


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