東の空の金星
「本当なの?」と涙を落としながら聞くと、

「桜の木の下で、初めて会った時、
俺はちょうど反対側にいて、君が見えなかった。
でも、風に舞う桜の花びらに伸ばされる手を見て、驚いた。
桜の木から出て来たみたいに見えたんだ。
君は桜をずっと見上げていて、俺に気づかなかったけど、
桜の花びらが降る中に立っている君に
俺はポカンと見とれていたよ。
綺麗なひとだなって…。
あの時、君が好きになった。
嘘じゃない。
海に出たら、波打ち際をのんびり歩く君を見つけて、
きっと運命だって思った。
…今俺はかなり恥ずかしいことを言ってるな。」

とヤマトは急に赤くなって話を止める。

「外に出る?」と私が聞くと、

「ねえ、ここに来たのは俺に会いたかったから?」と私の顔を見る。

「あの日の続きを知りたくなったの。
どんなことを知ることになったとしても…
…この1年間、私もヤマトを忘れられなかった。」

と涙を拭いて、立ち上がり、ヤマトに手を差し出す。

ヤマトは大きく微笑み私の手を握って立ち上がる。

大きな暖かい手。
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