東の空の金星
「さっき、私って春のキツネ。って呼ばれてた?」とヤマトの顔を見ると、

「ああ。
君の座った場所や、眠ったベットに桜の花びらがいくつも落ちてた。
きっと、コートのフードに入っていたんだと思うけど…
急にいなくなったから、桜の頃に、人を騙しに来るキツネだったんじゃないかって
あいつが言い出してさ…
俺もキツネに騙されたんだって思った方が楽だったからね。」と真面目な顔で、

「でも、桜子は戻って来たね。
俺の恋人になってくれる?」と私の瞳を覗く。

「おたがいのことは、何も知らないけど?」と私が笑うと、

「俺は桜子が好きだってことがわかってるから
それでいいよ。」

「じゃあ、少しずつ知り合っていくということで」

「…少しずつって、もう、1年も待った。
最速で頼むよ。」

と少し、困った顔をしてから、
私の頭に真新しいヘルメットを乗せて、
顎で留め付けようと私の目の前に大きな手をだす。
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