東の空の金星
その日、江ノ島に近い海沿いにある新しそうなマンションの
2LDKのヤマトの部屋に寄って
少し片付けをしてから、
(まあ、ゴミはためてなかったけど、ごちゃごちゃと片付いていない。)
バイクを置いて、シックなセダンの車でドライブしながら
ヤマトのオススメのイタリアンで食事をし、
早い時間に私を横浜にある自宅まで送ってくれた。

でも、ヤマトは車の中で私の手を掴んで、簡単には帰してくれず、
溜息と共に
「コーヒー、飲みますか?」と言う私の言葉に満面の笑みで頷き、
1LDKの狭い部屋に嬉しそうに上がり込んでくつろいで、
次の日お互い仕事だからと、夜遅く名残惜しそうに帰って行った。


「案外近いよな。」

と安心したように笑ったヤマトは
仕事を早く終えると、
(鎌倉駅前の建築事務所に勤める建築士だ。)
私の部屋に泊まりに来るようになっていったのは

それからすぐの事だった。

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