東の空の金星
向かい合って食べるのはナシだな。
と海に向かって大きなテーブルの隣り合わせに朝食の準備をする。

パンとコーヒーと
家から持ってきたプレーンヨーグルトに
さっき作った形を残して煮詰めたイチゴのジャム。

パンは作業台に並べてトングを用意し、
自分はプレッツェルクロワッサンだけをお皿に乗せた。

まあ、待ってると片付けが間に合わなくなると思って、

「先にいただきます。」

と控え室に入って開いたドアに向かって声をかけて食事を始めた。



しばらくするとバタバタと階段を降りる足跡がする。

髪が濡れている。シャワーを浴びて来たらしい。

「待ってろよ。」とオーナーは呆れた顔を見せるけれど、

「どれもうまそうだ。」

と作業台に並んだパンにを選ぶのに時間がかかっている。

「早く食べてください。キッチンを片付けて、少し休憩します。」と言うと、

「厳しいシマリスだな。」とお皿いっぱいにパンを取っている。

「欲張ると、食べ切れませんよ。」

「いいや。ちゃんと食べる。」とムキになっている様子だ。

子どもか。

私は軽く無視をして、1番好きなパンを楽しみながら海を眺めた。
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