東の空の金星
翌朝私が店について、そっとドアを開けると、
誰もいなくてホッとする。

窓のそばに寄り、金星に挨拶してから
従業員控え室のドアを開けて、明かりをつけると、

「…眩しいシマリス。消せ。」とオーナーが毛布を被る。

また、ソファーで眠っていた様子だ。

「こんな所で寝ていると、風邪を引きます。」
と明かりを消してため息をつき、
また、着替えるのを断念して、キッチンに戻る。

まったく、なんで2階で寝てないんだ。
迷惑なヤツ。

と心の中で、ブツブツ文句を言いながら、
身支度を整え、
パンを作り始める。

今日はクルミとレーズンが入ったハード系のパンと、
ベーコンとチーズを入れたフランスパン。
ケークサレにはブロッコリーとオニオンとコーンとソーセージを入れて、
後はメロンパンにクリームパンにした。

焼きあがってケークサレの味見をしていると、
また、オーナーが起きてくる。

「鼻がいいんですね。」と言うと、

「昨日は遅刻したから、焼きあがったら、早々に食べる事にする。」と笑う。

「もう直ぐ焼き終わりです。」と私が顔を見ると、

「今日は待ってろよ。」とバタバタと階段を上がっていった。

また、一緒に食べるのか…

習慣になりそうだな。とチョット面倒臭い。

話すこともないのに…。
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