東の空の金星
隣に並んで一緒に海を見ながらパンとヨーグルトを食べる。

でも、話はないからほとんど黙ったままだ。

時折、

「これ、美味いな。」と独り言を言うオーナーに

「ありがとうございます。」と返事をするだけだ。


私が片付けを始めると、オーナーが2杯目のコーヒーを淹れてくれて
私は片付けながら、
オーナーは窓際に立って海を見ながらコーヒーを飲む。

ふと、オーナーが振り向いて、

「朝、どうやって来てる?」と私の顔を見る。

「…歩いて。」

「江の島の賃貸マンションじゃなかったか?」

「そうですけど…」

「真っ暗じゃないのか?」

「慣れてますから。」と言うと、

急にキッチンの前に立ち、

「車か原付持ってないのか?」

「持ってませんよ。都内は便利でしたから。」

「…待て。シマ。お前は真っ暗な中ひとりで歩いて来てるのか?!」

…シマリスじゃ、なくてシマになったな
と オーナーの怒った顔を見上げる。

「そうですけど。」

「女の子は暗い道をひとりで歩くなって習ってないのか!」

「パン屋は朝、早いんです。」

「夜が明けてから出勤しろ!」

「店のオープンに間に合いません!
それに、ランチの時間にはウェイトレスの仕事があります!」

オーナーは眉間にシワを思い切り寄せて、怒った顔になり

言葉が出なくなる。

漫画だったら、グヌヌヌーとか音が出そうだ。

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