東の空の金星
「シマ、江ノ島の辺りは夏は野犬が多くなる」

野犬?って野良犬?

「若者が夜中もウロウロしている。
夜が明けるまで家にいなさい。」

ああ、なるほどねえ。

「大丈夫ですよ。走るの早いですから。」

「言うことを聞け。」

「聞きません。」と睨み合う。



そんな顔をしても、怖くないよ。

だって、さっきまで、美味しそうにパン食べてたじゃん。



オーナーはコーヒーカップをガン!とキッチンに置き、

控え室から足音を立てて2階に上がっていった。

…勝ったね。

パン屋は夜が明ける前から、仕事をするもんだ。

と私は鼻息も荒くキッチンを磨き上げた。
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