東の空の金星
今日もマスター夫妻は早めにやって来て、
私が作ったパンを試食する。

「シマちゃん、今日も美味しいよー。食べすぎちゃいけないのにー」
と美味しそうに食べてくれる遥香さんが嬉しい。

「俺達、試食じゃなくて、昼飯になってないか?」とマスターも笑う。

「ケークサレって美味しいね。食べたこと無かったけど。
また、大和さん食べ過ぎちゃったんじゃない?」と言われ、

ケークサレは2切れ食べていたかな?と思い出すけど、

「今日はチョット言い争いをしました。」とチョット目を伏せると、

「え?大和さんと喧嘩したの?怒ってるの見たことないけど…」と遥香さんが驚いた顔で私を見る。

「夜明け前に家を出るなって言われて…」

「え?家って何時に出てるの?」

「4時くらい。」

「そりゃ、真っ暗だ。あー、パンってそんなに作るのに時間かかるんだ。
俺達、ちっとも気づいて無かったな。ごめんね。」

「いいえ。実家では朝食に間に合わせるよう、
もっと早い時間に仕事を始めるんです。
だから、ここで働くと決めた時には
わかっていたことなんで、気にしないでください。」と言ったけど、

4時か。

大和さんの心配もわかるな。

もう少し近い部屋を見つけるか、俺が迎えに行くことにするかな。

などと、ふたりとも考えているみたいだ。



ああ
そっか。
ここは眠らない街じゃないからなあ。


「真剣に近くで部屋を探してみます。」と私が笑うと、

「それがいいかな。俺達も探すの手伝うよ。」と開店の準備をする事にした。
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