東の空の金星
なるほど…。

事情を聞いてここの店がオーナーの奥さんのために作られた事がわかった。
一軒家に不似合いな業務用の2つのキッチン。
奥さんのために右側につくられたキッチンは
本格的なケーキを作るようになっていっても
いつまでも使い続けて欲しいと願いが込められたキッチンだ。

おかげで、私が使うのにも十分な器材が揃っている。



「少し、考えさせてください。」と私は部屋を出る。



理解できるのと

ここに住み込むってことに同意できるのは違う。


休日まで、仕事関係の人に会わなくてもいいでしょ!


「シマ」と私の後をオーナーが追いかけて来て、私の手を掴む。

「ここに引っ越すまでの間は部屋に迎えに行く。
4時半にマンションの下にいる。」と

「お、オーナー仕事は?」

「明け方は1度目がさめるんだ。別にいつもと同じだろ。」

とフッと笑って奥の部屋に戻って行く。



なんでー?!

そんな事をされたら、引っ越さないといけなくなるじゃないか!

私の選択の自由は!?

と腹が立って、

私は「帰ります!」とそのままに格好に薄いコートを羽織り、

バッグを持って店を飛び出した。
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