東の空の金星
急な坂道を少し息を弾ませ、上がってみる。

この坂道を登りきった所あたりにさっき見た店があるはずだ。

あの店からの景色を見て見たい。

今日は天気もいいから綺麗な海が見下ろすことができるだろう。

坂を登りきってもお店の看板は見当たらない。

坂の上の住宅街を行ったり来たりする。

どの家だっただろうか?



どの家も大きく、立派で、門構えも個性的だけど…

ひとつの家の扉が開いて、スーツ姿の女性の3人組が出てくる。

「ごちそうさまでしたー。」「美味しかったねー。」と口々に言っているので、

その家に向かって行って、正面に立つとカツオ出汁の香りがふわりとした。

さっきドアが開いたときに香りも一緒に流れ出たのだろうか?

カフェじゃなくてお蕎麦屋さん?

どう見ても普通の一軒家に見える。

二階建ての木造の大きな家。

でも、よくみると、木造に見えるように建てられたコンクリートの家だ。

こんな海が正面に見える大きな一軒家はかなりのお金持ちって事だろう。

また、ドアが開いて年配のご夫婦らしいひとが出て来て、

「ありがとうございましたー。」

という男性の声がドアの中から聞こえたのを合図に、

私は厳しい(いかめしい)門が開いたままになっている家の敷地に踏み込んだ。
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