東の空の金星
翌朝、オーナーは宣言通りに
マンションの前に銀色に光る車を止めて待っていた。

よく見るエンブレムの高級車。

私は「おはようございます。」と車に乗り込み、
お互い黙ったままで10分ほどの道のりをやり過ごした。


いつもにように私は淡々とパンを作り、
オーナーは控え室で二度寝をし、
パンが焼ける頃には起きだして、
一緒に並んで押し黙ったまま、朝食を食べた。

「あいかわらず、美味い。」と機嫌の悪い顔で言って
2杯目のコーヒーを淹れてくれ、

また、お互いに黙ってコーヒーを飲んだ。

私は片付けをしながら。

オーナーは窓に向かって…。



気まずい。

全く頑固なオトナだ。

私がここの部屋に住む。と言うまで、

このまま続けるつもりだろうか。




翌週もオーナーは私を約束通りに迎えに来たけど、

水曜日から

2度寝をした後はパンが焼けても起きられずにいて、

出勤30分前に私がソファーに起こしに行くと、

慌てて2階に上がって出勤の用意をし、

パンをくわえて

出勤するようになった。

明らかな寝不足でしょ。

…やれやれ。
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