東の空の金星
出て来たご夫婦と会釈をしながらすれ違ってドアの前に立つと
木製の重厚な両開きのドアの片方、
私の目の高さより随分と上の位置に
『凪』
とこれまた木製の小さなプレートに
金色の文字が小さく印刷されたものが付けられている。
…『なぎ』って読むのかな?
ドアの目の前に立たなければ、ここがお店だなんて絶対にわからないよね。
ドアをゆっくり開けて中を覗くと、
「いらっしゃいませー。」とさっきの男性の声。
私を見ると、ちょっと驚いた顔をする。
「もしかしたら、会員制でしたか?」と小さな声を出すと、
「いいや。お客さん初めてですよね。
よくわかりましたね。」
とグレーのカフェエプロンを付けた30代後半に見える背に高い男の人が、
クスッと笑いかけてくれた。
案外親しみやすい笑顔でちょっとホッとする。
「海からテラスが見えたので、カフェかなあって思って…」
と顔を赤くすると、
「えーと、2時からカフェで、昼は蕎麦しかないけど、良ければどうぞ。
あ。普通の家だから、靴は脱いでね。」
と広い玄関の横の大きな鍵のかかる靴箱を指差した。
…やっぱり普通の家だったか。
私は靴を脱ぎながら
「おじゃまします。」と言うと、店の中から少し楽しそうな笑い声が聞こえ、
「やっぱり、初めて入る時って
『おじゃまします』って言っちゃうよねー。」
と男性もクスクス笑って、私の先に立って歩き出す。
「あ」
と私も顔を赤くして、クスクス笑いながらその人についていった。
木製の重厚な両開きのドアの片方、
私の目の高さより随分と上の位置に
『凪』
とこれまた木製の小さなプレートに
金色の文字が小さく印刷されたものが付けられている。
…『なぎ』って読むのかな?
ドアの目の前に立たなければ、ここがお店だなんて絶対にわからないよね。
ドアをゆっくり開けて中を覗くと、
「いらっしゃいませー。」とさっきの男性の声。
私を見ると、ちょっと驚いた顔をする。
「もしかしたら、会員制でしたか?」と小さな声を出すと、
「いいや。お客さん初めてですよね。
よくわかりましたね。」
とグレーのカフェエプロンを付けた30代後半に見える背に高い男の人が、
クスッと笑いかけてくれた。
案外親しみやすい笑顔でちょっとホッとする。
「海からテラスが見えたので、カフェかなあって思って…」
と顔を赤くすると、
「えーと、2時からカフェで、昼は蕎麦しかないけど、良ければどうぞ。
あ。普通の家だから、靴は脱いでね。」
と広い玄関の横の大きな鍵のかかる靴箱を指差した。
…やっぱり普通の家だったか。
私は靴を脱ぎながら
「おじゃまします。」と言うと、店の中から少し楽しそうな笑い声が聞こえ、
「やっぱり、初めて入る時って
『おじゃまします』って言っちゃうよねー。」
と男性もクスクス笑って、私の先に立って歩き出す。
「あ」
と私も顔を赤くして、クスクス笑いながらその人についていった。