東の空の金星
江ノ島について、島の上に行く『エスカー』というエスカレーターがあったけれど、

景色がが楽しめない。と言われたので、

歩いてのぼることにした。

島の頂上近くにある、江ノ島神社を目指す。

「何で神社って坂や階段が多いんでしょうね。」

と階段の途中でを立ち止まって息を切らし、溜息をつきながら(最近店からほとんど出ていないかな)言うと、

「達成感のためかな。」とオーナーは私を振り返って、

「若いくせに体力ないな。」とホラと、私に手を出した。

「何でそんなに元気なんですか?」

とありがたくオーナーの手に捕まって、力強く引っ張られながら階段を登っていく。

大きな手は頼もしい。



「普段から鍛えてるから…」

「本当に?」

「嘘だよ。」と大和さんは笑いながら島の上の神社にたどり着く。



「何をお願いする?」と境内で聞かれ、ちょっと考えてから、

「美味しいパンが焼けるように。」とお賽銭を入れて手を合わせる。

…他に願いたいこともない。


「じゃ、俺はパンを食べ過ぎて太らないようにお願いしないと。」とオーナーも言いながらお賽銭を入れて、手をあわせた。


途中にあった良縁を招くピンクの絵馬がかけられたイチョウの木や、
南京錠がたくさん付いた恋人の丘。などを横目にみる。
(南京錠に2人の名前を書いて、永遠の愛を誓うらしい。)
私もいつかは恋人と来れるようになるだろうか?

自分の男を見る目ってヤツが

今ひとつ自信はない。

この間に男もハズレだった。…気がする。

結婚しようと言っていたのに若い他の女が良くなってしまったらしい。

隣を歩く中年のオジサンでも、
出会ってから11年経っても、
…そして、会えなくなった今でも、
妻を忘れずに大切に思っているのに…

こういう男がアタリなんだろう。

と横顔を盗み見る。

オーナーは野良猫が集まっている場所を少し緊張した顔でそうっと通り抜けようとしているところだ。

きっと猫は苦手なんだな。

と私は微笑む。

「何?」と突然私が見ていた事に気付いたみたいだ。

「なんでも、ありません。」とクスンと笑うと、

「…犬は大丈夫だ。」と顔を背けてボソボソ言い訳をしていた。

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