東の空の金星
三島先生は

「やっぱり気が強そうだな。」

とくすんと笑って両手を上げて私から離れた。

「軽い犯罪ですよ。」と冷たい声で言ってやると、

「その年であんなクオリティの高いパンをつくるなんて、
おとなしい顔をしてても、
気の強い女に決まってるって思ったんだよ。
やっぱりメソメソしないで睨んできたね。
俺さあ、男に寄りかかってくる女は嫌いなんだ。
自分の道を歩いてるシマちゃんみたいな女が好きなんだよ。
シマちゃん俺と付き合わない?」

「私はこういうことをする男は嫌いです。
それに、
他の女の子を追い払うのに
私を使うのはやめてください。」

と私は屋上に着いて開いたドアを閉めて、1階のボタンを押す。

「それもわかっちゃった?
あの子達結構しつこくってさ…
いいねえ。ますます好きになりそうだ。」と私の真横に立つ。

「それ以上、近づかないでください。
ケーサツ呼びますよ。
エレベーターの中だって防犯カメラが付いてます。」

「俺だって、変態じゃないから、これ以上はしないって。
いたってノーマル。付き合えばわかるよ。
シマちゃんに忘れられないように印象深くしているだけ。」

印象深すぎでしょ!

私は怒った顔で1階に止まったエレベーターを降り、

振り返らずに院内を突っ切る。

「シマちゃん、またねー。」

と笑った声が聞こえたけど、

そんなのは無視に決まってるって。
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