東の空の金星
その5。微妙なふたり。
お見舞いに行くと、遥香さんは輝く笑顔で私達を迎えてくれ、

私達はまだ、赤ちゃんには直接会えなかったけど、
ガラス越しに小さな赤ちゃんに会うことができた。

すごいな。
小さいのに力強い泣き声。
真っ赤になった赤ちゃんが看護師さんに抱っこされておとなしくなって
あくびをしたりする。

「新しい命ですね。」と私が言うと、大和さんは口も効けずにうなずいている。

私達が持って行ったパンは職員さんや、産婦さんに食べてもらえた。
もちろん遥香さんも食べて、
「ああ、疲れた。すごく美味しいわ。」とため息をついて微笑んだ。

マスターが病院の玄関まで送ってくれる。

「頑張って、パパ。」と私が言うと、

「これから、3人家族だ。いや、4人になるかもな。」と楽しそうな笑顔を見せる。

「頑張って、パパ。」と大和さんも笑って、マスターの肩を叩いた。



帰りの車の中で、

「子どもって、無条件に愛しいな。」と大和さんが微笑む。

「大和さんも欲しくなっちゃいましたか?」

「俺はもういいよ。
これから相手を見つけて子どもを作ってたら、
生まれるてくるまでにヨボヨボになるし」

「明日は何が起こるかわかりませんよ。」

「おいおい、怖いこと言うなよ。」

「何が起こるかわからないから、楽しいんじゃないですか。」とくすんと笑うと、


「シマはすごいな。」と呟くように言った。
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