東の空の金星
身体が痛い。

あれから、毎週土曜に私はオートバイ屋に行き、
熊の山下さんのレッスンを受けている。

同じ重さのバイクを傷がつかないマットの上に倒し、
「うりゃー」と掛け声だけは勇ましく、持ち上げようとするけど、
まだまだコツがつかめていないのか、動かすこともできなくて、

今週は中型バイクに変更を余儀なくされた。

でも、これもキチンとは起こせない。

道のりは険しく長そうだ。

だって、全然興味がなかったから、
バイクの構造がどうなっているのかも知らなくて、
どこに力を入れて、どう起こせば良いのかも皆目見当もつかないからだ。

授業料はパンでいいよ。
と言われたので、
土曜の昼間に試作用に作るパンを多めに焼いて持って行っている。

山下さんはパンを気に入ってくれ、
一緒にパンを頬張るバイク屋に来る
ちょっと砕けた感じのおにーちゃんたちとも仲良くなっている。

明日は何が起こるかわからない。って本当だ。

私は今までちょっと怖いと交流のなかった男の人とも笑顔で話すようになった。

まあ、山下さんのお気に入りになった私に

手を出そうと考えるオトコはいないけれど…。

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