東の空の金星
仕事中に肩を揉んでいると、

「ねー。シマちゃん、ご飯ぐらい付き合ってよ。」

とニコニコ話しかけて来るこいつも最近の悩みのタネだ。

「三島先生。お店でナンパは困ります。」と眉間にシワを寄せて、睨んでおく。

「ナンパじゃなくって本気だって。
マスターちょっとは協力してよ。」

と当直あとに時折カウンターに座るようになった三島先生がマスターに話しかける。

「せんせー、もうちょっと真面目ならお勧めできるんだけどなあ。」

「ええ?俺って真面目だよ。」

「この間も、女の子といたのを見た気がするけど…」

「えー、あれはあの子が付いてきちゃっただけだよ。
それにシマちゃんとちゃんと付き合うようになったら
シマちゃんとだけ付き合うって。」

「…絶対嘘だね。」と私が鼻で笑うと、

「いいや、シマちゃんのパンに誓う。」

「…パンは食べたらなくなるよね。」とマスターが笑って、

「えっ、じゃあダメじゃん。」

「誓わなくていいので、近づかないでください。」

とキッチンを出て、テーブルのお客様の追加の注文を聞きに行った。
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