東の空の金星

「シマ、あの男はやめとけ。」と夕飯を一緒に食べながら私の顔を見る。

いや、そんなこと言われるような事は何にも無いけど?

「三島先生とは何もありませんが…」と眉間にシワを寄せて答えると、

「あの男は見るたびに違う女を連れてるぞ。
…最近、土曜に出かけてるのはあの男か?」

「違います。」

「俺のいう事を聞け。」

「違うって!」

「…シマ、俺はシマが泣くのを見たくない。」

「しつこい。違うって言ってるでしょ!」

と私が立ち上がって食器を片付けようとすると

「ちゃんと最後まで食え。芳江さんが作ってくれてるんだ。」と怒った声を出す。

「明日、ちゃんと食べます!」と食器にラップをかけて、冷蔵庫にしまっていると、

私の後ろに立って、

「…俺は…シマが心配なだけだ。」と真面目な声を出す。

なんで、私の心配なんかしてるの?

そんな事はいいから自分の事を考えてよ。と悲しくなってくる。


「私の心配には気づかないくせに?!」

「…なんの事だ?」

と唖然とする大和さんを置いて、自分の部屋に戻る。



…大和さんは馬鹿だ。

私が大和さんに未来を見て欲しいって思っている事に

ちっとも気づかない。
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