東の空の金星
急に手が後ろから出てくる。大和さんの手だ。

「てっ、手伝わないで!」

「手伝わないよ。転ばないように支えるだけ。」とバイクに触れる。

急に軽くなってるけど?!

オートバイは真っ直ぐ立ち上がった。

大和さんが支えてスタンドを立てロックをかけてくれる。

私は放心状態だ。



「おー。」

とマスターと山下さんと店員さんが拍手を送ってくれる。

…なんか物凄くズルをしたような気がする。

「…シマにあげるよ。俺のナナハン。」と大和さんが笑った声を出す。

「じゃ、メンテナンスだな。」と山下さんが店員を呼ぶ。

「…シマは免許ないからまだ乗れないでしょ?」と大和さんが山下さんの顔を見る。

「4年もほっといたら、ダメだろ。藤原。」

「…でも、俺はもう」

「あのお嬢ちゃんは、おまえがまた乗るって言ってたよ。
もう、自分のだから、おまえに貸してあげるんだとさ。
いつでも乗れるようにしとくんだって。
アザだらけになって毎週バイクを起こす練習をしてた。」と私を見た。

…いや、舞台裏は恥ずかしいでしょ。

私は恥ずかしくなって

「気が向いたら、乗ってもいいですよ。」と赤くなって大和さんに言うと、

「…シマはアホだな。」と大和さんは私に機嫌の悪い顔を見せた。
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