東の空の金星
私は鏡の前でメイクを直し、口紅も引き直し、

何もなかったように席に戻ると、

強張った表情をした三島先生を見つめてみる。

「シマちゃん本当にゴメン。
傷つけるつもりはなかったってさっきは言ったけど、
僕はいつになっても振り向かない君を傷つけたかったんだと思う。
でも、今は自分がすごく苦しいよ。
馬鹿みたいだ。
君が藤原さんの事をあんな風に隠せないくらいに好きなんだって思ったら
気分が悪くなるくらい後悔した。
言わなければ良かったって…」

「…三島先生は私の心の中には誰かがいるってわかってても、
私を抱くことができますか?」

「他の女の子は大丈夫って思うけど、シマちゃんはダメだな。
僕は君の心ごと欲しいから…」

「残念。今なら先生のSEXフレンドになれる気がしたのに…」


先生とはSEXフレンドにしかなれない。という私の意思表示だ。


「…僕も残念だよ。
君を抱かなかった事をきっと後悔するって思うから。」と三島先生は少し笑った。

「先生、溶けたパフェは先生が食べてくださいね。
もうひとつ注文します。」

と笑って言うと、三島先生も笑った顔で追加の注文をしてくれる。

2人でパフェを黙って食べる。

きっとお互いに失恋したんだろう。


「シマちゃん、僕は来年の4月から大学病院に戻るよ。
一緒に、来ない?その時は恋人から始めよう。」と私の顔を見る。

「行きませんよ。これからはは友達って事で。」と私が手を出すと、

「頑張って一緒に東京に戻ってもらえるようにする。」と私の手をしっかり握る。


三島先生って
けっこう打たれ強いな。とちょっと笑える。


「一緒に行こう。」

「行かないって。」

と何度か言い合って一緒に笑いあった。
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