東の空の金星
コンビニには入らずに、波打ち際でぼんやり海を眺めていると、

「シマ!」と声が聞こえ、

「なんで、コンビニの中にいない?」

と大和さんがかなり怒った顔で大股でズンズン近づいてくる。

こ、怖い。

私は少しずつ後ずさって、波打ち際に沿って歩き出す。

「なんで逃げる。」

「や、大和さん、怒ってる。」と言っている間に腕を掴まれて、立ち止まる。

「シマ、迎えに来いと言ったきり電話にも出ないし、
待っていろと言ったコンビニにもいない。
こんな事をされたら普通は怒る。」

「ご、ごめんなさい。
だって、自分で帰るって電話で言ったから…いいと思って…」

「だってじゃない。…心配かけやがって。」

と、グイッと腕を掴んだまま、車道に向かって足早に歩き出す。

「ご、ごめんなさい。」ともう一度言うと、


足取りを緩め、

「もう夕暮れだ。もう少し、早く迎えにくるつもりだった。」

と車道につながる階段を上がる。


オートバイだ。


私は口が開く。


「日が暮れる前に少し走ろう。」と大和さんは柔らかい笑顔を見せる。


私は声が出せずに何度もうなずいた。
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