東の空の金星
今日は土曜日。

私は大和さんと遅い朝食を食べる。

「なに?」と大和さんが私の顔をみる。

「大和さん、明日予定はありますか?」

「うん?この間、実家に行くっていわなかったか?」

「明日どこか行きたいなって、…。
天気も良さそうだし、オートバイで…」

「シマ、おまえ、変だぞ。
いままで、俺が誘っても、オートバイに乗らなかっただろ。」

「あの、大和さん、明日は実家にいくのはやめて、
あの…。私と出かけるって…どうですか?」とボソボソ言うと、

「シマらしくないな。ハッキリ言え。」

「…だって、お見合いの相手と結婚したら、
…ここのお店をなくすかもしれないから…。」

「俺はもう、誰とも結婚する気はないよ。」

「…お見合い相手を好きになったらどうするの?」

「好きにならないよ。
だから、この店はなくならない。
…シマは安心して美味いパンをつくってくれ。」

「なんで、好きにならないなんてわかるんですか?!」


大和さんは驚いた顔で、
「…まあ、シマがいる間はこの店は続けるよ。
安心しろ。」
と、私の顔をみる。

「私は自分の働き先がなくなることを心配しているわけではありません!」

「じゃあ、なに?」

なに?って聞かれても
上手く返事ができない。

黙り込んだ私をみて、大和さんがため息をつく。

「明日は実家に顔を出してくるよ。
シマに予定がなかったら、本当はパンを頼もうと思ってたんだけど…」


私は食事を終えて、食器を片付けながら、

「…パン作ります。
茶色い月1ダースとカンパーニュとブリオッシュ半ダースづつでいいですか?」と大和さんの顔を見ないでいうと、

「ありがとう。午後から出かけるから、急がなくていいよ。
ちゃんと、シマのパンを宣伝してくる。」

と言って、大和さんも一緒に食器を洗い始めた。
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