東の空の金星
「シマ、いるのか?」

と言う、ノックの音と、遠慮がちな声で目が覚める。

大和さんの声。

「…はい。」と寝ぼけた声をだすと、

「シマ、出かけようか?」と大和さんの声がいっている。

時計をみると、まだ昼前だ。

「…午後からご実家でしたよね。」と聞くと、

「朝、パンが出来てたし、シマが見合いじゃないかって言ってたのが気になって、さっき、昼飯に間に合うようにパンを持って行ったんだ。
そしたら、やっぱり
そんな話で…
仕事があるっていって、帰ってきた。
院長夫人にも困ったもんだな。
俺の親まで巻き込むなんて…」と照れくさそうな声を出した。

「お見合い、…行った方がいいんじゃないですか?」

「今更なにいってる、誘ってきたのはシマだろ。
見合いより、シマとでかけた方がいい。
でも、今日は寒いからバイクはやめて車で行こう。
この間箱根で見つけた新しい日帰り用の温泉はどうだ?」と笑った声をだすので、

「30分で支度します!」と言うと、

「寝癖は直した方がいいぞ。」と足音が遠ざかった。
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